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社労士ノリコの事件簿⑱~賃金の支払請求権が3年に~

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「ノリコ先生、マスクが売り切れて手に入らないんです」

「SAWAちゃん、私、沢山買ってあるからあげるわよ」

「うわーっ、助かります。そう言えば、所長はマスクをしてませんね」

「所長は、自分がウイルスよりもしぶといから要らないんだって」

私はノリコ、企業の人事労務の手助けをする社労士だ。この冬は、インフルエンザが大流行すると言われていたが、新型コロナウイルスの登場により、中国をはじめ我が国でも大変なことになっている。米中貿易戦争に加えサプライチェーンの崩壊が世界経済を脅かしている。

 

違法だ!

「ノリコ先生、税理士のM先生のご紹介で伺いました、あさひ株式会社の竹村と申します」

「初めまして、社労士のノリコと申します。今日はどのようなご用件でしょうか?」

「先生にご相談したいことがありまして参りました。ウチの社員で困ったやつがいましてね。会社の規則や上司の指示に対して、『違法だ』と言っては反抗するんです。上司も法律のことは良く分かりませんから、対処のしようが無いと参ってしまって」

「それは大変ですね。具体的にはどのようなことがあったんですか?」

「休憩時間を30分ごとに2回に分けて与えているんですが、それが違法だと言うんです。また、仕事をさせても基本的なことすらまともにできないくせに、過剰な仕事をさせるのも違法だと何から何まで違法だと1日中、上司に食ってかかるんです。それで、上司も精神的に参ってしまって不眠症になっちゃったんです」

「そうでしたか。確かに法律を振りかざして自分の都合のいいように主張する社員が、会社の雰囲気を悪くするケースがあります。しかし、多くの場合、コミュニケーション不足などにより相互に理解できていないことが原因になっています」

「コミュニケーションも何もないですよ。私が、休憩について法律違反ではない、業務命令も適切に行っていると説明しても聞く耳を持っていません。それで、先週、退職勧奨をしたんです」

「えっ、退職勧奨したんですか?」

「ええ、しました。でも、退職はしないと返事をしてきました」

「まぁ、そうでしょうね」

「このままでは、他の社員にも悪影響がありますし、業務に支障が出かねません。ノリコ先生、解雇はできませんか?」

「なかなか厳しいと思います。ただ、このまま会社にいてもらっては困るというのであれば、解雇もやむを得ないでしょうね。労働審判や訴訟で争うことになるかも知れませんが」

「裁判ですか?勝てるのでしょうか?」

「裁判となると正直言って大変厳しいと思います。普通解雇の場合、よほど労働者側に責任があると認められない限り、基本的には会社側は、スタート地点から不利な状況にあります。7対3の割合で労働者が有利と考えてください」

「そうなんですか?じゃあ、裁判やっても仕方ありませんね」

「大変厳しいことは確かです。しかし、どうしても辞めてもらいたいのであれば、裁判前提でも解雇するべきでしょう」

「そうですね。もし裁判するとしていくらぐらい見積もっておく必要がありますか?」

「なんとも言えませんが、知り合いの弁護士の話しでは、労働審判の場合、解決に至るには、解雇に至る事情等を考慮して、給料の3、6、12か月分のいずれかが目安と聞きました。裁判となると2年ぐらいかかるとのことですから、その期間に見合う金額が必要と聞きました」

「結構な金額がかかりますね」

 

残業代の未払い

「ええ、そうですね。ところで、解雇に当たって残業代の未払いなどはありませんか?」

「それが、ない訳じゃないです。実は、ウチは定額残業制なんですが、規定の時間を超えるとサービス残業になってしまうんです」

「そうすると、未払いの残業代があるということですね」

「はい。確か賃金債権の消滅時効は2年でしたよね」

「はい、そうです。ただし、今年の4月以降に発生するものについては3年となる予定です」

「そう言えば法律が改正されましたね」

「ええ、民法が改正になり使用人の給料等の請求権の消滅時効が5年になりました。それに合わせて労働基準法は改正され労働基準法では賃金の請求権の消滅時効は5年、ただし当面は3年と定められる予定です。労働基準法は民法の特別法なので優先的に適用されます」

「3年ですか。ウチは、営業が主体の会社ですから、皆、結構帰りが遅いんですよね。定額残業制で月に30時間分支給していますが、実際の残業は、50時間ぐらいあるんですよ」

「そうすると、月当たり20時間ほどオーバーしているわけですね。ただし、賃金請求権の消滅時効が適用されるのは、今年の4月1日以降に支払うべき賃金から適用されますので、今までの分については、従来通り2年ですよ。それにしても、もし、解雇するとなると、未払い残業代の請求もされることが予想されますので、その点はご注意ください」

「いくらぐらいになるんですかね?」

「お給料はいくらぐらいですか?」

「その従業員の給料は、住宅手当と家族手当を含めて30万円ぐらいです」

「残業代の基礎となる賃金が25万円とすると、月に20時間分として2年分で約90万円ぐらいになると思います」

「うーん、意外に高額ですね」

「そうですね。未払い残業代は、法的に支払い義務がありますのできちんと清算をしておいたほうが良いでしょう。私が計算をお手伝いをいたしますが」

「それは、ありがたいです。よろしくお願いします」

「それと、もしかすると50時間程度というのは、毎月ですか?」

「ええ、ほとんど毎月です」

「そうすると、36協定の限度時間の1か月45時間、1年間360時間を超えていますので特別条項を設けていると思いますが、1年の内、45時間を超えることができるのは6回までとなっています。6回を超えているのですか?」

「そうですね、ほぼ毎月ですから超えていますね」

「それは問題ですね。直ちに改善策を講じる必要があります。皆さんの業務の棚卸をして、無駄な時間の使い方や業務がないかを検討しなければなりません。諸々を含めて、すぐに対処をしていきましょう。お手伝いさせていただきます」

 

新型コロナウイルスにもお気をつけて

「所長、マスクして風邪でもひいたんですか?」

SAWAちゃんが素っ頓狂な声をあげた。

「新型コロナウイルスが心配でね」

「所長でも心配事があるんですね」

二人のやり取りを聞いていたが、私には深刻な心配事がある。最近、スカートがきついのだ。これから春に向けて薄着となるのに、こんなことでは春を迎えられない。ファンの皆さんにも申し訳が立たない。明日から、真剣にダイエットしなきゃ。

ライター紹介

竹田 紀子

http://www.asahi-support.jp/

社会保険労務士法人 あさひ合同事務所
特定社会保険労務士
大手ホテル系レストランで、人事・労務に従事。
社会保険労務士資格取得後は、社会保険労務士事務所に勤務し経験を積む。
その後、愛知労働局 総合労働相談コーナーにて労働相談員として労働相談を受け、企業側、労働者側双方からの数多くの事例に労務管理のプロとして対応してきた。
現在の事務所に入所後は、顧問先の様々な問題に対するアドバイスを精力的に行っている。

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