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社労士ノリコの事件簿⑮~改正パート有期契約法における説明義務~

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「ハ、ハ、ハックション!オー、寒い。」

「所長、大丈夫ですか?」

いつも元気なSAWAちゃんが尋ねた。

「イヤー、昨日は飲み会で遅くなったから、何となく調子が良くないんだ。」

「まさか、インフルエンザじゃないですよねー?」

のりちゃんの声に

「多分違うと思う。」

と所長は曖昧に応えた。私を始めスタッフは全員インフルエンザの予防接種を受けている。約1名を除いては。今は、インフルエンザの流行期に突入している。特に忙しい時期を迎えてスタッフが欠けることは、一大事だ。

「皆、体調を崩さないように気を引き締めていきましょう!」

思わず口をついた。

 

ストライキ?

私は、ノリコ。クールでナイスな社労士と噂されている。ついこの間も、私の目力に負けて新しくクライアントになりたいとお客様から連絡があったばかり。なんて魅力的な「アタシ」なのかしら。

「ノリコ先生、フレンチレストランの田中社長からお電話です。」

のりちゃんの声に我にかえった。

「おはようございます、田中社長。今日は如何なさいました?」

「ノリコ先生、いつもお世話になっています。実は、ウチのパート達がストライキするって騒いでるんだわ。」

「何があったんですか?尋常ではありませんね。」

「それが、10月から最低賃金が上がったんで、給与水準を見直ししたんだ。ところが、古くからいるパートの時給と新しいパートの時給にほとんど差がなくなったことで不満が噴出したんだな。」

「確かに今年の最低賃金は28円もアップしましたからね。でも、なんでストライキなんですか?」

「それぞれの時給を公表して、みんなアップしたことを分かってもらおうとしたんだよ。そしたら、同じ仕事をしているのになんで時給が違うんだとか、自分は経験が長いのになんで新しいパートと時給が変わらないんだって騒ぎ出して、終いにはストライキだってことになっちゃったんだよ。」

「それは大変でしたね。でも、社長、時給の違いの根拠はちゃんとあるんですか?」

「イヤー、ウチはほぼ最低賃金だから、それに合わせて多少の色を付けているだけだよ。でも、長年勤めてくれたパートさんには少し良くしてやりたくて。」

「そうですか。パートであっても自分の能力や経験に見合った評価をキチンと受けた上で処遇が決まる仕組みがあると良いですね。」

「そうは言っても、ウチは調理場は補助的なことだけだし、ホールは接客や配膳するだけだからなー。」

「イエイエ、調理場であっても調理の下準備や段取りで出来る人とそうでない人の差はあります。ホールは尚更、接客の上手い下手、お客様に対する気遣いなど能力の開きは大きいものです。客観性のある評価制度を導入されることをお勧めします。また、再来年から、改正パート有期労働法が施行され、正社員とパートの間で同一労働同一賃金がスタートしますので、業務の棚卸しをして職務内容や人材活用の仕組みを整理しておく必要があります。」

 

同一労働同一賃金

「同一労働同一賃金?なんか聞いたことはあるけど、あんまりピンと来ないな。」

「仕事の内容や仕事に対する責任の程度や配置転換などの仕組みが正社員とパートで一緒であれば給与の単価を同じ水準にしなければならなくなりますよ。その上、採用時や従業員から求めがあった場合には、きちんと資料を用いて正社員との基本給や手当などの違いを説明する義務があります。この説明義務が重要なポイントです。なぜ違うのかを具体的に説明できないと説明義務を果たしたこととならず、トラブルのもととなります。そのためにも業務の棚卸がどうしても必要となります。同じパート同士でも多少の給与の差でもめているんですから、なおさらです。」

「えーっ、それは大変だ。なんせウチのパートは正社員と比べると給料が全然違うからな。だって、正社員はスーシェフをはじめ、皆何年も修業を積んできたコックとソムリエ、メートルドテルだからね。単なるパートとはレベルが違うんだよ。」

「それでしたら、逆に簡単なんじゃないでしょうか?シェフは調理のプロであり、コックも同様です。ソムリエは資格を持っていますし、メートルドテルは、給仕に関するプロです。つまり、パート以外はすべてプロ集団ですから、能力をきちんと測ることは難しいことではありません。具体的な仕事の内容を書き出して必要な経験や能力、資格などと組み合わせて整理すれば良いと思います。」

「んー、そうだな。一度皆に協力してもらってやってみるか。ノリコ先生、給料は何とかそれでちゃんと説明ができそうな気がしてきたよ。」

「そうですね、でも、給与は基本給だけではありませんので注意が必要です。」

「と言うと?」

「はい、給与には基本給のほか、様々な手当が支給されているケースがほとんどです。」

「うん、ウチも皆勤手当てや家族手当を支給しているよ。」

「そのようですね。実は、各種手当についても、その手当をなぜ支給するのかという目的やその手当の性質によって、正社員とパートで同じように支給しなければならないのです。」

「そんなことしている店はほぼないんじゃないかな。ウチだって、パートには手当なんて出していないよ。」

「各種手当には、①職務関連手当と②生活関連手当があります。①職務関連手当は、仕事に直接関係するもので、例えば技能手当や役職手当などがそうです。これは、仕事の内容やレベルに応じて支給されるものなので比較的問題となることは少ないと思います。ただ、皆勤手当は、正社員に支給するけれどパートには支給しないというのは問題があります。」

「なぜ?パートは欠勤しても他の者で変わりが利くけど、正社員は変わりが利かない。だからこそ、皆勤手当を支給しているんだ。」

「確かにそうですね。しかし、皆勤手当は、所定労働日を全日出勤することで支給されるものである以上、正社員であろうとパートであろうと変わりはありません。つまり、条件は同じです。」

「んーっ、これは困った。」

「田中社長、それだけではありません。②生活関連手当というのは、住宅手当や家族手当など職務に関連しない手当てですが、これらについては、正社員とパートを区別する理由を見つけることが困難な場合が多いのです。例えば家族手当は、配偶者や子供がある従業員に生活費の補填として支給していますが、これは正社員であろうとパートであろうと事情は同じです。」

「なんだって?だとすると住宅手当も同じということになるのか?」

「そうですね。」

「なんてこった!それじゃあ、パートにも皆勤手当と住宅手当を出さなければならいじゃないか。そんなことをしたらウチは赤字になってしまうよ。」

「そこで一つの案ですが、皆勤手当や住宅手当を廃止するというのもありかと思います。その代わり、正社員とパートの職務や能力の違いに応じて技能手当などとして支給することも考えられます。」

「そうだな、よくよく考えてみれば、パートも職場では正社員と同じ仲間。お客様にとってはパートだろうと正社員だろうと区別はなく、ウチの従業員ということに変わりはない。そうであれば、能力や成果に応じた納得できる待遇の方が、従業員もやる気が出て、お客様に満足していただき今以上にファン化ができるかもしれん。そうすれば、ウチも利益を上げることができる。」

「働き方改革の目指すところは、生産性の向上を通した労働者への利益配分の改善、つまり生産性の向上で企業が利益を上げ、従業員の賃金アップを通した経済全体の底上げです。田中社長のお考えは、正しいと思いますよ。」

「よし、では今後どうしたら良いか具体的な相談に乗ってくれ。」

「はい、承知しました。」

 

休暇を取ってバカンスへ

「ノリコ、あっちに珍しいものがあるわ、ちょっと覗いてみようよ。」

「そうね、行こう。ユカリは昔から好奇心旺盛だもんね。」

私は、リフレッシュ休暇を取って友達のユカリとタイのプーケットでバカンスの最中。

「ねえ、この時期は忙しいんじゃなかったの?」

ユカリが心配そうに尋ねた。

「うん、そうなんだけど、所長が、長年頑張ってくれたからって、休みをくれたの。事務所の皆には悪いけど、私もたまには骨休めしないと。」

「そうよね、所長さんも案外いいとこあるじゃない。」

「そうでもないの、実は、この休暇の代わりにお正月返上でたまった仕事をするように言われてるの。」

「えーっ、それって何?超ブラックなんじゃないの?あんたんところ、社労士事務所でしょ?」

「うん、大丈夫。お正月はきっちり休むわ。たまった仕事と言っても全部所長の仕事だもの。私が手伝ってあげる必要ないわ。」

そうだ、皆のお土産を忘れずに買っとかなくっちゃ。ブラックな所長には、皆のお土産の領収書をプレゼントしようかしら。

ライター紹介

竹田 紀子

http://www.asahi-support.jp/

社会保険労務士法人 あさひ合同事務所
特定社会保険労務士
大手ホテル系レストランで、人事・労務に従事。
社会保険労務士資格取得後は、社会保険労務士事務所に勤務し経験を積む。
その後、愛知労働局 総合労働相談コーナーにて労働相談員として労働相談を受け、企業側、労働者側双方からの数多くの事例に労務管理のプロとして対応してきた。
現在の事務所に入所後は、顧問先の様々な問題に対するアドバイスを精力的に行っている。

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