有限会社オフィスパティ キャリアコンサルタント 大山佳子です。
改元から、1カ月が経過しました。相変わらず官公庁関連御帳票は和暦が多く、「R」という表記や、令和という表記にも、自然に慣れてきたように感じます。
令和になってから(正確には2019年度スタートではありますが)、「有給休暇の取得義務化」や「非正規社員の待遇改善でもらえる助成金」がスタートするなど、柔軟な働き方が政府主導で推進されています。
いつ有給休暇を取得するのか、本来は働く労働者自身が権利として自己決定していくべきことを、企業側に罰金を設け。強制的にルールを定めるという考え方には、少し違和感が残ります。まるで、会社に負荷をかけないと、自律して働くことができないと決めつけている前提は、労働者を子ども扱いしているようにも感じます。一方で、ルールを無視して強権的に社員を支配するような会社も、残念ながら存在し続けており、弱い立場の社員を守るルールが必要であることも事実です。
これまでは、大企業と比較すると中小企業のほうが、変化への対応は早いと考えられていました。視野が狭く、検討ばかりに時間を割き実行力に欠けることから、新しいチャレンジをためらってしまうことを、「大企業病」と揶揄し、変化への対応力こそが、中小企業の「得意分野」とされていました。しかし、採用や人材教育に関しては、最近の中小企業のほうが「変化」についていけていないようにも感じています。チェックしてみましょう。
- 履歴書は手書き以外受け付けていない
- 「優秀な人材」が採用基準である
- 採用面接では、必ず「自己PRをお願いします」と言っている
- 女性採用に消極的だ
- 新卒の採用スタートは「企業説明会」だ
- 残業しない社員は会社への忠誠心が欠けているように感じる
- 産休・育休取得する社員を心から喜べない
- 新入社員教育は「名刺交換」と「電話応対」だ
- 部下が育たないのは部下の力量の問題と考えている
- これまでのやり方が一番良い方法と考えている
いかがでしたか?10の問いの内、あてはまるものはあったでしょうか?特に新卒採用においては、「売り手市場」の傾向が続くことが予想されています。これまで通りに採用することだけを「目的」とし、ルールに固執する考え方は、まさに大企業病を生んでしまいます。具体的に考えていきましょう。
選考書類は「手書き」であるべきなのか
特に新卒の選考においては「手書き」が主流です。皆さんの会社でもESや履歴書を「手書き」としているかもしれません。中途採用においては、あまり「手書き」にこだわる選考が行われていない現状を考えると、新卒でなぜ「手書き」選考が多いのかは気になるところです。もちろん、「手書き」だからこそ、応募者のキャラクターを感じられることも有るかもしれません。しかし、本来は、「何が書かれているのか」が大切なポイントだとすると、仕上げる時間が圧倒的にかかる「手書き」には、学生側に大きな負担を強いているという考え方も成り立ちます。
大手企業では、本気度の高い応募者だけに「絞り込みたい」という意識が高く、あえて面倒な「手書き」を採用しています。応募者を集めることに苦戦しがちな中小企業が、まったく同じ手法をとっているとしたら、「目的」の再確認が必要かもしれません。
「優秀な人材」が採用基準である
大企業の採用では、「優秀であること」は選考基準のポイントです。ある程度の人数確保が必要なため、結果としてある一定以上の学歴が条件となることも多いようです。出身大学が、わかりやすく「優秀さ」を見分ける一つの条件であることは事実です。
しかし、中小企業採用では、「必要な人材」という選考基準も重要です。今必要な人材を明確に出来ることは、中小企業のメリットであるはずです。メリットを活かした採用に必要な選考基準の再検討が必要かもしれません。
採用面接では、必ず「自己PRをお願いします」と言っている
採用面接での質問を一律「固定化」していませんか?
多くの応募者を「振り落とす」ためには、ある程度同じ質問により結果を横並びに比較検討することが、採用の効率化につながります。しかし、中小企業での採用、特に新卒の採用では、比較材料の少なさもあり、定型質問のみで応募者の適性を見極めるには難しいこととなります。決まりきった回答しか得られないと嘆く前に、質問の見直しが急務かもしれません。
女性採用に消極的だ
男女の区別なく柔軟な採用をすることのメリットは、中小企業にこそ多くなるはずですが、実際は女性採用に消極的な会社は、まだまだ多いように感じます。
女性支援窓口での相談には、結婚したパートナーの転勤で東海地域に来ることになったキャリア女性が多く訪れています。十分な職務経験があるにも関わらず、近い将来に出産・子育てがあるかもしれないことを、企業側が必要以上に懸念し、採用に至らないというケースを多く見かけます。また、新卒採用の現場では、「女子学生ばかりの応募しかない…。」という愚痴を聴くことがあります。今後、働き方がさらに多様化することを求められることを考えると、男性採用にこだわることは、採用の幅を狭める結果となっているかもしれません。
新卒の採用スタートは「企業説明会」
新卒採用に苦戦している企業には、学生との接点が圧倒的に少ない傾向があります。大学ではインターンシップを「単位化」するなど、企業との接点を増やす後押しをしています。たしかに、大手企業に目が行っている学生に対して、自社のアピールは難しいと感じるかもしれません。しかし、せっかくの接点機会を1DAYだけにする等、大企業より少ない接点しか持てていないとしたら、インターンシップをチャンスととらえなおす必要がありそうです。
大企業ではインターンシップに選考を設けているため、インターンシップに興味を持ちながらも、行けない学生が増えてきています。学生との出会いのチャンスを増やす検討が必要です。
これまでのやり方が一番良い方法と考えている
中小企業では、採用段階の初期から役員・社長など管理職が関わる事が多いはずです。よって、採用の仕方には経営者の考え方が色濃く反映されています。
通常の業務であれば、変化を恐れずチャレンジしていく姿勢を打ち出している人物が、採用に関しては、自分自身の「人を見る目」を変化させていないことがあります。人を見極める際には、自分自身の成育歴やキャリア経験が大きく影響するといわれています。最終面接に残った候補者への部下の評価ポイントに納得できず、やっぱり自分の目が一番と思っていませんか?変化のない採用活動は、形式的な業務となりがちです。これまでのやり方を少しずつでもブラッシュアップしていく意識を、管理職がしっかりと持つ必要があります
いかがでしたか?
大企業病は、業績が安定しているときにおこりやすいといわれています。中小企業だからこそ「変化への対応力」を採用業務にも発揮していただければと思います。
これからも、必要な時期にマッチした有益情報を発信していきます。お楽しみに!