採用活動の目的は新たな人材を採用することですが、採用活動で得られる効果はそれだけではありません。
自社の魅力を伝え、社員がコミュニケーションを交わすプロセスを通じて「この会社、いい会社だな」という印象を応募者にもってもらえれば、それはサービスや製品など事業に対するイメージアップだけでなく、採用ブランドにも影響していきます。
今回は、そんな好循環を生み出す採用活動について考えてみましょう。
ユニークな採用活動、インターンシップ。方法はいろいろあるけれど…
「採用ブランド」とは、「企業が差別化され、選ばれるにいたるイメージの総和」(リクルートワークス研究所)で、事業戦略や業績から、待遇、やりがい、昇進のスピードなど様々な要素が影響します。
この採用ブランドは、採用活動においても、様々なアプローチで上げることができます。平たく言えばそれは、「この会社は他とは違う」「なんかいいよね」と思ってもらえるような「何か」で、志望順位に関係なく、応募者がそう思うきっかけはいくつかあり、たとえばユニークな採用活動や内容の濃いインターンシップなどもあげられます。また大手企業が持つ、デザイン性が高く情報が充実した採用サイトも、ブランディングに貢献しているといえるでしょう。
ただこれらはいずれも有効なアプローチですが、どの企業でもマネできるものではありません。話題になりそうなユニークな採用方法や、充実したインターンシップのコンテンツを考えるのは簡単な話ではありませんし、採用したい人材像によっては、オーソドックスな採用方法のほうがよいこともあります。
また、採用サイトの「デザイン性」と「開発コスト」は比例しますから、中小企業で実現するのは予算的に厳しいこともあるでしょう。
しかし、中小企業には中小企業ならではのアプローチがあります。オーソドックスな採用プロセスのままで、コストもかけなくても、今までのやり方を少し見直せば、ブランディングにつながる採用活動は十分できるのです。
「採用コミュニケーション」を見直せばブランディングにつながる
では何を見直せばよいかというと、それが採用プロセスでの応募者とのコミュニケーションです。
多くの応募者に対応しなければならない大企業の採用活動と異なり、中小企業では「一対一」で「人と人」としての丁寧なコミュニケーションができます。ですからこの採用コミュニケーション次第では、「あの会社はいい会社」と大企業を凌ぐような好印象を応募者に残すこともできます。
そのための「コミュニケーション」の改善は、終わりがないほどいくらでもブラッシュアップできるものですが、ここでは「これだけは意識しておきたい3つのポイント」を確認しておきましょう。
コツ①「採用担当」の人選にこだわる
御社では、どんな人材が採用を担当していますか?
採用活動、特に新卒採用においては採用担当者が応募者に与える影響、そしてインパクトは企業が思っている以上に大きいものです。好感度の高い採用担当者であれば、その担当者への好感度がそのまま企業への好感度となりますが、その逆もまた然り。「この担当者、ちょっとな…」と思われてしまえば、それはそのまま企業のネガティブイメージになってしまいます。
ですから「誰」が企業の顔として採用担当になるかは、ブランディングの上では極めて重要な決断です。業務適性はもちろん、「これから採用したい人材に好かれ、企業が打ち出したいイメージに合う」というポイントも考慮して選ぶようにしましょう。
コツ② 不採用者への対応こそ心を込めて
採用活動では、応募者の多くが「不採用」になります。採用したい人材への対応は自然と熱が入り丁寧になりますが、不採用者への対応は事務的になってしまってはいませんか。
煩雑な採用業務では効率化も必要なのですが、採用活動をブランディングにつなげるのであれば、内定者よりも多い不採用者への対応も大切です。「不採用になったけど、あの会社はいい会社だった」と思ってもらえれば、その評判もじわじわと広がっていくからです。
「事務的ではない対応」と「効率的に業務を行うこと」を同時に実現するのは不可能ではなく、たとえば不採用メールも、テンプレートであっても心が込められた内容であれば受け手の印象は変わります。他にも面接でのコミュニケーションなど、「丁寧な対応」を意識してみましょう。
コツ③ 応募者の話を丁寧に聴く
「丁寧な対応」にはいくつかポイントがありますが、忙しい業務のなかでもし1つだけ実践するとしたら、ぜひとも意識していただきたいのが「応募者の話を丁寧に聴く」ことです。
就活生や転職した社会人に、印象の良かった企業の話を聞くと、「企業の担当者が、真剣に話を聞いてくれた」「本気で向き合ってくれた」というコメントが必ずといっていいほど出てきます。
反対に、「対応が冷たかった」「『採用してやる』みたいな態度だった」という対応だと、応募者からの印象は一気に悪化します。なかには、「最終面接まで第一希望だったけれど、最後に出てきた会長の態度が高圧的だったのが気になって、この企業では働けないと思い内定を辞退した」という事例もあるほどです。
- 相手の顔をみて話を聴く。
- 相槌をうつ。
- 相手の言葉を言い換える質問をしながら、内容を確認する。
こうした採用担当者の傾聴の姿勢は、応募者にいい印象を与え、「あの会社は誠実な会社だ」「社員がとてもいい人だった」と着実に会社の信用を積み重ねていきます。応募者の反応も変わっていきますので、もし今まで意識したことがない場合にはまずはここから実践してみるのはいかがでしょうか。