株式会社ディスコが行った調査では、2019年卒採用5月1日時点の内定率はすでに42.2%と、前年から採用活動がさらに前倒しになりました。しかし、今年の大卒求人倍率は1.88倍と、全国の民間企業の求人総数81.4万人中38.1万人の求人が未充足で終わる見込みということもあり、この段階では採用計画を満たしていない企業のほうが多いのではないかと思います。
特に中小企業にとっては、大手企業の選考が一段落し、内々定が出そろう6月以降が、2019年卒採用の成否を分ける正念場です。新卒採用計画を成功させるためにも、この時期を積極的に動いていきましょう。
夏から秋にかけて活動する就活生の特徴は?
夏から秋にかけたこの時期に就職活動を行うのは、
- 公務員試験や大学院進学からの進路変更者
- 部活に打ち込んでいた体育会系学生
- 海外留学者
- もらった内定を辞退した学生、または辞退はしていないが納得していない学生
- その他家庭の事情など、なんらかの事情で春に就職活動ができなかった学生
の5パターンに分類されます。
これらの学生は、大学3年の夏からインターンシップに参加し、企業情報を集めて、面接などの準備期間もあった春採用の就活生とは少し異なります。彼らはそれぞれの事情から、業界研究や企業情報収集を今まで行っておらず、情報収集の時間が圧倒的に足りません。また、自己分析や面接の練習をする時間も不足しています。
さらに多くの友人知人が就職活動を終了し、残りの学生生活を満喫するモードに入っていますので、多かれ少なかれ焦りも感じています。
こうした状況を踏まえ、秋までに採用を終えるためには次の3つを意識することがポイントとなってきます。
ポイント1:「就職フェア」など合同企業イベントに出展する
秋までに採用を終えるためには、これからの期間でいかに就活生に自社を知ってもらうか?が最初のポイントとなります。
「就職情報サイトに掲載する」「大学のキャリアセンターに求人をおいてもらう」など、様々な方法がありますが、おすすめなのは夏以降に民間企業や自治体が開催する「就職フェア」などの企業の合同イベントへ出展することです。
なぜなら、たとえば「就職情報サイトに掲載する」のは有効ではありますが、今は大手企業や有名企業も夏から秋にかけて採用活動を継続しているため、情報が埋もれてしまうリスクがあります。
また、大学のキャリアセンターも、今までに信頼関係ができていればいいのですが、関係ができていなければ、少しハードルが上がってしまいます。今年の成果を期待するためには、求人票を置いて終わり…というわけにはいかないので、担当者と連絡をとり、頻繁な情報提供を行う必要があるからです。(しかし今後の採用活動のために、今から関係構築を行っておくのは重要ではあります。)
その点、「就職フェア」はリーチできる就活生の数こそ、他の手段に比べれば少ないですが、何より直接コミュニケーションできるという大きなメリットがあります。
対面のコミュニケーションができれば、今まで情報収集の時間がなかった就活生に、企業情報をきちんと届けられますし、「社員の雰囲気」「ブースの印象」などから、就職情報サイトや大学の求人票では伝えきれない自社の良さを伝えることもできます。
予算やマンパワーに余裕があれば、様々な方法を試すのもよいですが、予算とマンパワーが限られているならば、対面コミュニケーションで自社の魅力を伝えやすい「就職フェア」を優先的に検討してみるのはいかがでしょうか。
ポイント2:就活生の話を丁寧に聴く
この時期は、就活生の絶対数が少ないため1人1人の応募者ときちんと向き合う時間がとれます。この時間を活かし、採用成功にむけて、就活生の話はぜひ丁寧に聞くようにしてください。「他の進路を第一志望として考えていた」「部活や留学など他のことに打ち込んでいた」という子の時期の就活生は、「なぜこの業界や仕事を希望するのか」「何がやりたいのか」といった考えがまとめきれていなかったり、表面的だったりすることもあります。
それを「全然考えていないし、ダメだな」で一蹴せずに、就活生が業界や企業理解を深められるような情報をこちらから提供し、考えを掘り下げられるような質問を投げかけて、就活生が考えを深めていけるようにサポートするつもりで話を聴いてください。
そのプロセスに付き合えば、「それがやりたいならば、うちの会社に入社したら~ができる」と自社のアピールもできますし、「自分に真剣に向き合ってくれる人がいる」と就活生の動機形成にプラスの影響を与える可能性も大いにあるでしょう。
ポイント3:選考期間は短く設定する
春採用では、3月に採用広報が解禁されてから一気に説明会が始まるため、説明会や面接は3~4月にピークを迎えます。しかし夏採用では、この春採用ほど選考期間が同時期に進行するわけではありません。夏採用にむけた仕切り直しをいつから行うかによっても、選考期間は変わるので、自社が選考を始めたころには、他社の選考がかなり進んでいる…ということも。
さらに、周囲に就職活動を続けている人が少なくなっているこの時期の就活生には、「できれば早く、就職活動を終わらせたい」という気持ちがありますから、「早く内定が出たところが問題なければ、そこにしよう」という心理も働きます。こうした状況から夏以降の採用活動は、選考期間のスピード感も重要です。次の面接を近い日程で設定するなどの工夫をしていきましょう。
また、選考期間を短くするのは、他のメリットもあります。
心理学では「単純接触効果(ザイオンス効果)」といって、会う頻度が高いほど好感度が高まりやすくなると言われています。選考プロセスで就活生と接する回数は一般的に2~4回ですが、これが2か月くらいの間に2~4回会うのと、1~2週間の間に会うのとでは、同じ回数でも「頻繁に会っている」感が全く異なります。
短期間のうちに何度も顔を合わせれば、この単純接触効果で就活生とコミュニケーションがより取りやすくなりますし、採用に意欲的な姿勢が伝わり、自社に対するマインドシェアを高めることもできるでしょう。
就活生との出会い方、話の聞き方、頻度やスピード感などの「コミュニケーションの質」は、就活生の応募動機形成に影響します。秋までに採用を終えるためにも、この時期からの採用活動こそ、コミュニケーションの質にこだわっていきましょう。