第1回 転職の決め手の「仕事内容」きちんと伝えられていますか?
こんにちは。採用から定着まで企業の成長を支援する株式会社アールナインの小松です。
中途採用も売り手市場の今、自社の内定者は「ぜひ入社してほしい」と思うような人材であればあるほど、他社からも評価され複数の内定を持っていることも少なくありません。
しかしここで、転職者が入社を決めるのは何が決め手になっているのかを知っていれば、採用プロセスでのコミュニケーションも変わり、自社への入社を意思決定してくれる応募者を増やすこともできます。
転職者が何を決め手に入社先を選んでいるのか。それを踏まえた上で、中小企業はどんなコミュニケーションをとればよいのか。
今回から3回シリーズで考えてみたいと思います。
転職するとき入社の決め手ランキング
「やっぱり、転職するなら給与のいい会社でしょう」
そんなイメージがあるかもしれませんが、実は転職者が転職時に最も重視する項目は、「給与(年収)」ではありません。エン・ジャパン株式会社が行った「転職希望者のホンネ調査2015」によると、転職の際に最も重視することは「仕事内容」で71%。「年収」はその次になっています。
同調査によると、「転職を考えている理由」で最も多いのは多い順に
- 第1位 給与に不満がある 44%
- 第2位 会社の将来性に不満がある 42%
- 第3位 会社の考え・風土が合わない 32%
- 第4位 仕事内容に不満がある 31%
- 第5位 職場の人間関係がよくない、上司や同僚と合わない 26%
と続き、「仕事内容」は第4位ですが、入社先を決める際には、「これまでの経験が活かせるかどうか」「自分がやりたい仕事かどうか」が決め手となっているようです。
「仕事内容」は面接でのコミュニケーション次第で変わる
この調査結果は、中小企業にはチャンスとも言えます。
なぜなら「年収」となると採用意欲の高い大手企業の年収と比較するのは厳しく、また業種によって利益率の高い業種と原価率が高い業種がありますから、企業努力にはどうしても限界があります。
しかし「仕事内容」であれば、どんな仕事内容をよしとするかは転職者1人1人の価値観によって大きく異なります。中小企業だからこその仕事内容の魅力が伝われば、入社の決め手になるからです。
転職者に求人情報の発信の仕方、面接でのコミュニケーションで、転職者にとってより魅力的に仕事内容が伝わるように意識すれば、売り手市場の中で自社を選んでもらえる可能性を高められます。
自社の仕事内容を転職者に響くように伝えるためにも、次の3つの行動をしていないかチェックしてみましょう。
「仕事内容」をどの転職者にも同じように伝えていませんか?
「仕事内容」は転職者の志向にマッチして、初めて入社の決め手になります。1つの求人に応募してきた複数の転職者に、仕事内容を全く同じように説明してしまっていませんか?
「そりゃ、同じ仕事内容なんだから、同じ説明するでしょ」
というご意見もおっしゃる通りなのですが、実は転職者の志向に合わせて伝え方にもちょっとした「マイナーチェンジ」が必要です。
たとえば成長意欲が旺盛なタイプなら、具体的な業務内容に加えて、その仕事を通じてどのように成長できるか、2~3年後にはどんな仕事を任せていきたいかなど、「仕事を通じて得られる経験や描けるキャリア」を強調するといいでしょう。
安定志向の転職者には、「大手自動車部品メーカーと長年の取引があるので、業績は安定しています」と安心感を与えるのが効果的ですし、同じような状況でも「大手企業と一定の取引があるので業績は安定していますが、リスク分散のために新規顧客開拓が必要だと感じています」と問題意識を共有することが効果的なタイプもいます。
転職者の志向性に合わせて、仕事内容の魅力を伝えられるように、その求人を様々な角度から語れるようにしておきましょう。
転職者の「転職理由」をしっかり深堀していますか?
また、転職者の志向に合わせて仕事内容を伝えるためには、転職者の「転職理由」をしっかり深堀して聞くことが大切です。
- 前職を辞めたのは何故なのか。
- 何をやりたいと思っているのか。
- それは何故なのか。
- どうして自社を選んで応募したのか。
表面的な志望理由だけを聞いておしまいではなく、時には「なぜ?」と質問し、深堀しながら「転職理由」を確認していきましょう。転職者が何を考え、何を望んで転職活動をしているのかがわかれば、転職者に響くアプローチができます。
また「転職理由」をしっかり聞くことは、企業と転職者双方の可能性を広げることにもなります。
たとえば一見、職務経歴書上では一貫性がないように見えるキャリアも、ちょっと眉を顰めたくなるほど多い転職回数も、その理由をしっかり聞いてみれば本人なりにしっかり考えた背景があったり、「それは仕方ない」と思える理由があったりすることもあります。
面接で聞いてかえってきた答えを「あ、そう」で済ませず、「どうして?」「なぜ?」と質問して転職者をより深く理解するよう努めてみましょう。
「仕事内容」を業務内容しか伝えていない…ことはありませんか?
「仕事内容」には、業務の内容だけでなく、どんな人と関わり、どんなコミュニケーションを取って、どんな裁量とスピード感で仕事を進めるか?将来的にはどんなことを任せていきたいか?など「仕事のやり方」や「仕事をする環境」、「将来への期待」も含まれます。
これらの内容をきちんと伝えると、単に業務内容だけ伝えるよりもずっと魅力的に、転職者に「仕事内容」が伝わります。
- お客様の声を直接開発に活かせる。
- 自分の裁量で仕事を進められる範囲が広い。
- 入社後2~3年で課長になることを目指してほしい。
- 入社後4~5名の若手社員のマネジメントをしてほしい。
- 社長直属の仕事なので、意思決定が早くスピード感を持って仕事が進められる。
等々、募集している求人の職種に関する「仕事のやり方」や「仕事をする環境」や、採用する人材への「将来への期待」も含めて、転職者にわかる形で求人票や自社サイトの採用ページ、面接でのコミュニケーションなどで「仕事内容」を伝えていきましょう。
「仕事内容」が決め手になる会社に
「仕事内容」が決め手になる会社とは、人事担当が転職者の話をしっかりと聴き、「仕事内容」がその転職者に「決め手」となるように伝えられた会社です。
転職者とのコミュニケーションを見直し、ぜひ「仕事内容」が入社の決め手になるような会社になりましょう。
参照データ
エン・ジャパン株式会社「転職希望者のホンネ調査2015」(2015.10)