第4回 「就職活動体験型」のインターンシッププログラム
第3回では、中小企業が勝負できるインターンシップのプログラム例として、多くの学生を相手にする大企業とは違うきめの細かい対応ができる「現場の仕事体験」や「仕事のシミュレーション体験」をご紹介しました。しかし、事業内容や業務内容によっては、実際の業務を体験、あるいはシミュレーション体験をプログラムに取り入れるのが難しいこともあるかと思います。
そんな時には、「就職活動」や「社会人」を体験してもらうというタイプの「体験型」のインターンシップを行うの1つの方法です。
今回はその「就職活動・社会人体験型」のインターンシッププログラムについてまとめてみたいと思います。
就職活動・社会人体験型のインターンシッププログラムとは
「就職活動」や「社会人」を体験するプログラムは、これから始まる就職活動に備えた準備のサポートを行うものです。
3月から本格化する就職活動を控えて、就職活動を何から始めたらいいのか、社会人としてのマナーは大丈夫なのか、不安に感じている学生は少なくありません。こうした学生に対し、就職活動の不安解消になり、役に立つようなコンテンツを提供するのがこのタイプのプログラムです。
実際の業務体験型のプログラムは、ある程度自社の業務に興味がある学生がターゲットとなりますが、就職活動が始まる前のこの時期では、志望する業界や職種を絞っていない学生も多いのも現状です。業務体験型だと参加した学生の満足度は高い一方で、プログラムに興味を持つ学生がこの段階で自社の業界や業務に興味のある学生に絞られてしまいます。
一方、このタイプのプログラムなら、ある程度自社に興味のある学生に加えて、「まだ志望が固まっていない」学生に対し「就職活動に役に立ちそう」という理由から参加してもらえる可能性があります。
それではどんなプログラムを用意すればよいのか、具体的な例を見ていきましょう。
➀「就職活動に役立つこと」の体験例
まずは、「就職活動に役立つこと」を体験してもらうプログラムです。このプログラムでは、次のような例があります。
【インターンシッププログラム例】
- 自己分析のやり方を説明し、実際に学生が自己分析を行い、社員がアドバイス・フィードバックする。
- 自己PRの作成の仕方や、企業が求める(知りたい)視点を紹介。学生は実際に自己PRを作成し、社員がアドバイス・フィードバックを行う。
- 就職活動の面接の企業側の視点、自社の面接に応募した際に重視するポイントなどの紹介や模擬面接体験を行う。
- 就職活動で必要なマナー(電話、メール、面接時など)を紹介し、実際にやってみる。
この時期の学生は、「自己分析のやり方がわからない」「面接が不安」といった不安や戸惑いを持っています。その学生の不安に目を向け、解消するようなコンテンツが喜ばれるでしょう。
➁「社会人」としてのマナーの体験例
実際に行っている企業は少ないですが、社会人としてのマナー、ビジネスマナーを学ぶというインターンシップもあります。
また、マナーだけでなく、社会人としての考え方、対応の仕方(面接の日やアポイントがある日に遅刻をしそうだったらどうしたらよいか、企業への電話の掛け方、メールの仕方など)をケーススタディを通じて学んでいくというのもあるでしょう。
「就職活動・社会人体験型プログラム」の注意点
就職活動に役に立つことや社会人としてのビジネスマナーを体験するこれらのプログラムは、どんな企業でもできるものです。言い返すと、多少は自社ならではの特徴やカラーを出すことはできても、「どこの企業で聞いても同じ内容」になりかねません。
そのため、この方向性でプログラムを検討するのであれば次の2点を注意する必要があります。
➀自社の人材育成方針などと結びつける
インターンシップでこのプログラムをメインにしてしまうと、単なる就職塾のようになってしまいます。
そうならないためにも、自社の人材育成や教育に対する思いとつなげ、「弊社では人材育成に対してこんな考えを持っている。だからこそ、学生の皆さんにも就職活動を通じて成長してもらいたい」等のメッセージをきちんと伝えていきましょう。そうすることで、学生も「なぜ就職活動に役立つインターンシップを提供しているのか」がわかります。
人を大切にする企業としてのスタンスが学生に伝わるので、自社に対する学生の興味関心度合いも高められるでしょう。
➁ナビゲーター役の社員の適性
プログラムを通じて企業を理解してもらうということが難しいため、そのナビゲーターをする社員がどのように学生と関わるかがポイントです。
その社員が学生にとって
- 「イキイキ働いていて楽しそう」
- 「こんな社員がいる会社だったら、この会社は面白そうだな」
- 「こんな社会人になってみたい」
と思えるような人材であれば、その社員をきっかけに自社の事業内容や業務内容に興味をもってもらえるようになるでしょう。
学生の立場にたって、踏み込んだコミュニケーションができるほど、学生の印象はよくなりますが、事務的で表面的なコミュニケーションに終わってしまえば、せっかくインターンシップを開催しても、応募につながるようなよい印象を学生に残すことは難しくなります。
ナビゲーター役がその点を意識しながら関わることが、実務体験型のプログラムよりも重要だということを意識しておきましょう。
「中小企業でも勝負できる!学生にとって魅力的なインターンシッププログラム」について4回にわたって紹介してきましたが、自社のリソースを生かしたベストなインターンシップは各社それぞれです。
プログラム内容による参加状況調査、開催後の満足度調査、インターンシップに参加した学生がその後応募したかどうかなどの追跡調査などを行いながら、自社ならではのノウハウを重ねていきましょう。