第2回 「メンター」としての人事には何が求められる?
こんにちは。採用と人材育成のコンサルティングを行う株式会社アールナインの小松です。
メリットも多いメンター制度ですが、中小企業で導入するには「適切な人材がいない」「メンターへの教育や研修が間に合わない」などの課題もあります。第1回ではそんな課題に対し、人事が中途入社者への「メンター」となることを解決策の1つとしてご紹介しました。
そこで第2回は、実際に中途入社者の「メンター」として人事にどんなことが求められるのか、現場のメンターとの違いをカバーするために意識したいポイントなどについてまとめてみたいと思います。
中途入社者の「メンター」として何をすればいいのか?
「中途入社者は、社会人としての経験があるんだから、そんな手取り足取りフォローしなくてもいいだろう」
と思われがちですが、いくら他社でキャリアを重ねてきたとはいえ、この会社では全くの「新人」。それは新卒の新入社員と変わりません。そのため数か月の間は、会社の制度や事務手続きなどの細かいルールなどにスムーズに慣れていけるようサポートする必要があります。
そのサポートをするのが中途入社者のメンターの役割で、具体的には
- 会社の制度やその制度の申請の仕方
- 年間の社内行事とその内容
- 会社での生活ルール(社員食堂や休憩室の使い方、社内のイベントへの参加の仕方など「暗黙知」になっているようなルール)
- 各種伝票など事務手続きのやり方
- 業務の進め方
- 入社後のキャリアステップ
- 職場の人間関係
などについて、中途入社者が社内のルールや理解し、社内での生活のリズムをつかめるようにフォローしていくことが望ましいでしょう。
職場のメンターと人事のメンターの違いは?
メンターは、「話しやすく相談しやすいように」という点で、年齢が10歳以上離れないくらいまでの職場の先輩社員が行うのが一般的です。
人事がメンターとなる場合にもこれを当てはめて、数名の人事担当から「中途入社者に年齢が近い人」という点で選ぶと選択が厳しい面があるかもしれません。
しかし「話しやすさ」という点では、選考プロセスからコミュニケーションをとっている人事採用担当は、中途入社者からすれば入社時点で「最もよく知る社内の人間」です。年齢の近さではなく、その立場を生かした「話しやすさ」があるといえるでしょう。
また職場にメンターがいる場合は、OJTの先輩とは違うものの、もし何か気になったことがあったときにすぐに質問・相談できる、同じ部署であれば業務や職場の人間関係、入社後のキャリアについて相談しやすいという点があります。
一方、人事がメンターの役割を担うとなると、一般的には人事部門(管理部門)と現場はフロアや棟が違うなど離れていることが多いので、その物理的距離が気になるかもしれません。しかし、中途入社者のメンターとしてフォローが必要な内容は、前述のように社内の制度や社内の生活ルールに関するものも多く、これはメンターの職種に関係なく対応できます。
職場の先輩社員がメンターになるメンター制度の場合でも、メンターとしての活動は月1~2回程度の面談かランチを共にするというケースもありますので、「フロアが違う」「なかなか顔を合わす機会がない」という点も定期的な場を設定することでクリアできるでしょう。
人事がメンターの場合、中途入社者と業務内容が異なることから、キャリアに関する相談や職場での業務の進め方、人間関係などについては職場のメンターほど詳しい情報提供をするのは難しくなりますが、その点は次のような対応でカバーすることもできます。
「メンター=人事」ならではのデメリットをカバーするために
職場の人間関係に関する悩みやその部署での業務を行うために必要だったり、知っておくと役に立ったりするような経験則(「××に関しては○○さんに聞くといい」「△△さんはとても細かいから、細心の注意を払ったほうがいい」など)については、いくら社内の顏が見えやすい中小企業とはいえ、人事のメンターではカバーしきれないこともあるでしょう。
そんなときにおすすめなのが、職場で中途入社者のフォローをしてくれるような先輩社員と、中途入社者を繋いでおくことです。どんな職場にも一人か二人くらいは、管理職以外のポジションで後輩の面倒見のいい社員がいませんか?配属先の部署でなくても、同じフロア内で毎日顔を合わせるような部署であれば適任です。
面倒見のよい社員は人事から声をかけられなくても、職場に新しく入社した中途社員に目をかけてくれるかもしれませんが、人事から声をかけられればより意識をしてくれるはずです。そんなフォローをお願いしたい社員に中途入社をする前に、
「今度○○さんの部署(隣の部署)に、××さんという中途入社の方が入ってきますので、慣れるまでちょっと気にかけてあげてもらえますか」
と一声かけておきましょう。そして中途入社者には、「先輩社員の○○さんは頼りになる方なので、何かあればぜひ相談してください」と一言紹介しておけば、お互いに声をかけやすくなるでしょう。このようなちょっとした声かけが、中途入社者が相談しやすい環境づくりにつながります。この他にも人事の「声かけ」次第で、中途入社者の緊張をほぐし、職場にスムーズに馴染むためにサポートできることがあります。
次回第3回では、このメンターとして中途入社者の緊張をほぐすためにどんな声かけやコミュニケーションが望ましいのかについて、詳しくご紹介させていただきます。