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社労士ノリコの事件簿⑧~試用期間中または満了での解雇は可能なのか~

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「ノリコ君、いつもご苦労様。今日は、もう仕事を切り上げて帰りなさい。」

「エッ、まだ終業時刻前ですが」

「たまには早く帰ってリフレッシュしたまえ。」

「はい、ではお先に失礼致します。」

「そう、そう、君が出掛けている時に、A社から電話があって相談したいことがあると言うので、話を聞いて問題を解決しておいたよ。」

「あ、ありがとうございます。」

何か変だわ。いつもなら絶対に早く帰って良いなんて言わないし、私の仕事を代わりにやってくれるなんてことはあり得ない。しかし、何はともあれ、午後4時に仕事を終えた私は、友人のユカリと食事をすることにした。

 

新しい部下

「ノリコ、少しスマートになった?」

「痩せたんじゃなくやつれたの。毎日毎日、仕事が山のようにあるんだから、まいっちゃう。そういえば、ユカリ、イケメンの新しい部下ができたって。」

「イケメンかどうかはともかく、新しい部下には手を焼いているわ。大手の会計事務所からの転職だから、出来るって聞いてたんだけど、これが全く使えないの!」

「そうなんだ、最近は人手不足だから良い人材は中々見つからないよね。」

ユカリは中規模の会計事務所で税理士をやっている。スタッフとして入社した男性職員がどうやら、能力不足らしい。

「ウチのボスは、仕事は出来るんだけど、人を見る目が無いのよ。でも、3ヶ月の試用期間があるから、あと少しでサヨナラ出来るわ。」

「試用期間満了で解雇するって決まってるの?」

「アラッ、だって、試用期間が終わって本採用しなければ良いんじゃないの?」

「試用期間は確かに適性を見るためにあるんだけど、本採用をしない場合は、普通解雇より多少基準が緩いけど、原則、普通解雇と同様にそれ相応の理由がないと解雇出来ないわよ。」

「さっきから、『解雇、解雇』って言葉が気になってるんだけど。試用期間てその期間が終われば自動的に契約が終了するんじゃないの?その上で、新たに本採用の契約を結ぶイメージでいたんだけど。」

「そうね、多くの人はそういうイメージで試用期間を捉えているわね。じゃあ、試用期間について少し解説してあげるわ。」

 

試用期間とは?

試用期間とは、簡単に言うと、本採用を前提としたお試し期間のようなもの。数回の採用面接だけで自社にマッチする人材かどうかを見極めるのは難しいもの。そのため、企業が、長期雇用を前提としてその人の勤務態度・能力・スキルなどを見て、本採用するかどうかを決定するために設けられている期間が試用期間。

通常、試用期間は3カ月から6カ月程度に設定されることが多いようです。よく勘違いするケースは、例えば3ヵ月月を試用期間とした場合、3カ月契約を結んでその期間満了で一度労働契約が終了し、その時点で本採用をするかどうか決定すれば良いというもの。これは、法的には3カ月の有期労働契約を結び、その契約が期間満了になった時点で、期間の定めのない労働契約を新たに締結するということです。

つまり、有期労働契約期間を「お試し」期間として労働者の適正を見極めることとしているのです。このときに検討すべき問題は、まず第1に求人内容と実際の労働契約の内容が異なることに起因するものです。

例えば、「正社員を募集」するような場合、期間の定めのない労働契約を前提に求人をしているわけですから、3カ月の有期労働契約を結ぶことは求人内容と実態が異なっていることになります。もし、労働者の適性等から3カ月の期間満了で雇止めした(本採用しなかった)場合、労働者は「正社員として採用されたのに、3カ月の期間満了で雇止めされた。話が違う。」ということになるでしょう。本来、求人条件は、労働契約の内容、つまり「この条件で採用すると確定したもの」ではなく、求職者が応募するための「誘引」に過ぎません。しかし、実際には、労働契約締結時に求人条件と異なる特段の取り決めをしない限り、求人条件が労働契約の内容となります。

そうすると、有期労働契約時に労働者にその旨をきちんと説明し納得させておかないと、労働者は、有期労働契約自体が無効であることを主張し、会社としては雇止めができない恐れが生じます。
第2に現実問題として、正社員に応募したのに有期労働契約を結ばされることに抵抗を感じ、結果として良い人材を採用できない恐れがあります。

ただし、必ずしもこういった手法が否定させるわけではありません。労働契約締結時に、労働者にしっかり説明したうえで、労働者に納得してもらい、原則、労働契約を更新しない旨の契約を締結し、従業員として相応しいと思った場合には、改めて正社員として採用し直すこととすれば問題ないでしょう。従って、この方法はこれらのデメリットがあることを良く理解し、労働者の納得を得ることがポイントとなります。

次に、「試用期間中の解雇」が簡単にできるのかどうかについては、過去の裁判例からもそうではないことが明らかにされています。「解雇」は、解雇権濫用法理が労働契約法第16条に定められ、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合は、解雇権を濫用したものとして無効である。」とされています。つまり、原則的には、試用期間中であっても、解雇については、「客観的に合理的な理由」と「社会通念上相当」の2つの要件を満たさなければ、無効、つまり解雇できないことになります。

しかし、試用期間は、「解約権が留保された労働契約」つまり、一定の要件を満たす場合には、解雇が認められるという性格も有します。これは、試用期間を設ける趣旨、つまり「お試し」であることから導き出されるもので、解雇は原則として解雇権濫用法理に従うが、試用期間の目的に照らして、会社に通常の解雇よりも広範な裁量を認め、会社に一定の条件の下、解雇権を認めるということです。

従って、試用期間中の労働者の適格性等に重大な支障があるなどの試用期間前には知ることができなかった事実等が判明した場合であって、その事由に基づき解約権を行使することが試用期間中の解約権行使の趣旨等に照らして客観的に相当であると認められる場合に限られるのです。

最後に、先に解説した3カ月の有期労働契約を締結し、期間満了後に本採用を行おうとする場合は、契約を更新しない旨が明確にされている場合を除いて、有期労働契約自体が「解雇権が留保された労働契約」とみなされるため、3カ月の有期労働契約期間は試用期間とされ、解雇権濫用法理が適用されるので注意をする必要があります。
つまり、期間満了で雇止めができなくなります。

 

求める水準と能力

「ヘーッ、そうなんだ。なんだか面倒くさいわね。じゃ、ウチの役立たずは、解雇できないの?」

「そうね、ユカリから見て能力不足というのは、多分相当高いレベルを求めているからなんでしょう。実際どの程度か分からないから確実なことは言えないけれど、イケメン君の過去経歴等から考えて、能力不足ということは事前に分からなかったということは言えるわね。ただし、採用時の面接や試験で一定程度の情報を掴んでいることが普通だし、ユカリの求める水準が高すぎると考えられるので、今回のケースは解雇は難しいわね。」

「それじゃあ、困るわ!私の負担が増えちゃうじゃない!」

「まあ、お宅の所長さんがどうするかによるけど、諦めて、キチンと教育をして一定の水準までスキルアップさせることを考えた方が良いわよ。」

「モーッ、ノリコ、何とかしてよ!私本当に、ムニャムニャムニャ・・・」

 

「ただいま三河安城駅を定刻通りに通過いたしました。次の名古屋には後10分少々で到着いたします。」

ハッと、目が覚めた。そうだ、今日は朝から研修で東京に出張だったんだ。じゃあ、さっきのは夢?そうよね、あんな優しい所長見たことがないもの。おかしいと思った。なーんだ、夢だったのか。これから、事務所も楽しくなるかと期待していたのに。

ブルブルブルッ、ブルブルブルッ。

マナーモードにしていたスマホが震えている。

「はい、ノリコです。あら、所長、どうなさいました?」

「どうしたもこうしたもないよ!早く帰ってきて溜まってる仕事を処理してくれよ!それから、ケーキのお土産忘れないように!」

あーあっ、現実はこんなもんだわ。まあ、仕方ないか!

ライター紹介

竹田 紀子

http://www.asahi-support.jp/

社会保険労務士法人 あさひ合同事務所
特定社会保険労務士
大手ホテル系レストランで、人事・労務に従事。
社会保険労務士資格取得後は、社会保険労務士事務所に勤務し経験を積む。
その後、愛知労働局 総合労働相談コーナーにて労働相談員として労働相談を受け、企業側、労働者側双方からの数多くの事例に労務管理のプロとして対応してきた。
現在の事務所に入所後は、顧問先の様々な問題に対するアドバイスを精力的に行っている。

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