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社労士ノリコの事件簿⑦~問題社員に対する懲戒処分編~

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「このヤローッ、ふざけたこと言ってるんじゃねーよ」

「何だとーッ、お前の今のは、パワハラだぞー!」

「上司に向かって、なんて口を聞くんだー。」

ハッと目が覚めた。顧問先の山下部長と井上課長が私の夢の中でケンカをしていた。

「フーッ、なんて夢を見たんだろう。全く寝覚めが悪いわ、昨日の件が原因だわね。」

思い返すのも馬鹿馬鹿しい出来事があった。

 

職場環境を乱す人

「このティラミスは、俺が食べるんだー。」

「何言ってんですか、これは私が食べるって言ったじゃないですかー」

SAWAちゃんと所長が凄い形相で睨み合っている。元栄養士のキミちゃんが、ティラミスを作って事務所に差し入れしてくれたのだ。

「所長は、もう2つも食べたじゃないですか。私は、まだ1つも食べてないんですよ!」

全く困ったものだ。もう少し、所員をいたわる気持ちを持って欲しい。この一件が、悪い夢に影響したのだ。気をとりなおして、身支度を済ませオフィスに向かうと、来客があるとキミちゃんが言う。

「どなたかしら?」

「税理士のM先生です。何かお困りのようですよ。」

「ありがとう。」「M先生、どうしたのかしら?」

「イヤーッ、ノリコ先生、早くからすみません。突然お邪魔しちゃって。」

「M先生、どうなさったんですか?」

「実は、藤井君とマズイことになっちゃって、困ってるんです。」

「藤井さんと?彼は、先生の信奉者じゃなかったですか?」

「それが、事務員の野中さんが、他の事務員に対してパワハラまがいのことを言ったり、事務所の方針に逆らったりと職場環境を乱しているんです。 藤井君は、ウチのナンバー2なので、注意してくれているんですが。彼が、私に何とかするように言ってきたんです。」

「それは当然ですね。それで、先生は、どうなさったんですか?」

「野中さんに、注意をしました。彼女は元々あまり仕事ができる方ではないのですが、ヘソを曲げて更に仕事の手を抜くようになりました。ただ、きちんと話をすれば、分かってくれると思うんです。それに対して、藤井君は、皆の迷惑になるので、退職させるべきだと言うんです。」

「なるほど、職場環境が悪化しているのであれば、そう考えますね。 周りが迷惑を被っているのであれば、解雇も考える必要があるかもしれませんね。しかし、その前に本人としっかり話をして、理解を促すことが大切です。その為にも、懲戒処分を適切に行うようにしてください。なぜ懲戒処分になったのか、会社は従業員に対して何を期待しているのかを理解させることです。その上で、教育を施すことにより本人の反省と成長につなげていきます。」

「えっッ、教育が必要なんですか?始末書を書かせるだけではダメなんですか?」

「会社には企業の存立と事業の円滑な運営のために企業秩序を維持する必要があるため、従業員に対する懲戒権は認められますが、懲戒処分にするだけでは根本的な解決になりません。何がダメなのか、どう改善すべきかを理解させることが会社の義務でもあります。そのための教育が絶対に欠かせません。」

「でも、ウチのような5人ばかりの小規模な事業所でどうやって教育なんてするんですか?」

「それでは、懲戒と教育についてご説明しましょう。」

 

懲戒処分

懲戒処分を行うためには、就業規則などに懲戒の種類、懲戒の事由、懲戒に対する従業員の弁明手続きが規定されている必要があります。何の規定もなく会社には懲戒権があるから何でもかんでも懲戒して良いということにはなりません。特に懲戒に関しては、従業員に対して不利益な処分を科すわけですから、懲戒規定のある就業規則等が周知されていることが条件となります。従業員は、誠実に労働を提供し企業秩序を維持する忠実義務を負っています。

その一方で、従業員は、誰しもより良い職場環境で働くことを望んでします。懲戒の対象になる従業員は他の従業員の良好な職場環境を破壊していることになるので厳正な対処が望まれます。しかし、懲戒権を濫用することで従業員の権利を侵害することは認められません。

そこで、事前に懲戒に関する手続きや事由をキチンと周知しておく必要があるのです。その上で懲戒に際し、弁明の機会を与え、本人の弁解を聴き、一方的に処分をすることの妥当性を検証することも必要なことです。

また、懲戒解雇に相当するような場合は別ですが、懲戒は企業秩序の維持が目的ですから、懲戒処分をしただけでは、その目的を達することはできません。本人の反省を促し、どう改善すべきか会社に教育する義務があります。就業規則の服務規定や懲戒規定などを理解させる機会を設けたり、ハラスメントに対する勉強会を開催する、全社的に従業員同士のコミュニケーションをどう図るか話し合いをするなど、会社が主導し教育の機会を提供することです。

このように懲戒と教育はセットで考える必要があります。そして、懲戒と教育は必ず記録を取っておくことが大切です。記録に残すことの意味は、会社のノウハウの蓄積と後に懲戒解雇など重大な処分を行う際の証拠になるということです。懲戒解雇であろうと普通解雇であろうと解雇を行う場合には「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当な処分」と認められない場合は、解雇権の濫用とみなされます。

遅刻ばかりする従業員を突然、懲戒解雇するのは社会通念上相当な処分とはみなされないでしょう。厳重に注意をしてその都度教育を行い、それでも同じ過ちを繰り返し、改善する見込みがないということになれば、懲戒解雇も相当な処分とみなされることもあります。そのためにも、処分の相当性を担保する記録の積み重ねがものをいう事になります。

「M先生の事務所では、まず、経営者であるM先生と野中さんが話し合いの場を持ち、今回のパワハラまがいの件についてきちんと調査をしてください。その上で懲戒処分が必要だと確認できれば、けん責処分とし始末書を提出させたら良いのではないでしょうか。そして、パワハラのことを含めて就業規則の勉強会を私が講師となり、貴事務所で開かせていただいてもよろしいですよ。それとは別に、M先生には経営理念について従業員に理解してもらう機会を設けてください。」

「そうかー、色々と本人の話を聴いてあげなくちゃ、とは思っていたけど、懲戒処分にするのか。なんかもめそうな気がして、気が進まないなー。」

「従業員ともめることが目的ではありませんよ。他の従業員に対する迷惑行為であることを理解してもらうための手段です。また、これは他の従業員に対するM先生の義務でもありますよ。」

「分かりました、一度話し合った上で、パワハラの事実が確認出来たら始末書を書いてもらいます。その時は、ノリコ先生、勉強会宜しくお願いしますよ。」

 

一件落着

「イヤーッ、所長さん、今回は良い勉強になりました。」

「M先生、どうされたんですか?」

「ウチの職員の件でノリコ先生のご相談させていただいたんですが、従業員を懲戒処分にしたんです。そしたら、その従業員、泣き出してしまって。よくよく話を聴くと、私が彼女を適当にあしらっていたことに対する不満と不安から他の社員に対して意地悪をしていたようなんです。」

「ホーッ、それで?」

「従業員を差別していないこと、今後はキチンとすべての従業員に目を向け面談の機会を設けることにしました。そうしたら、その従業員もとっても喜んでくれました。その上、他の従業員に対してちゃんと謝って、今後は職場で仲良くやっていきたいと言ってくれました。」

「そうですか、それは良かったですね。」

「藤井君も納得してくれて、これからも頑張ってくれるそうです。」

「藤井さんどうかなさったんですか?」

「まあ、その件についてはノリコ先生からお聞きください。そうそう、今度、ノリコ先生に食事をご馳走しようと思っています。所長さんもご一緒に、アッ、そういえば最近お忙しいようでしたね、所長さんはまたの機会にさせていただきましょう。」

「ノリコ先生、ちょっと!」

「はい、所長なんですか?」

「さっきM先生が来られたんだけどね、今度、食事に一緒に行くんだって?」

「はい、今回の御礼にと誘ってくださいました。」

「私は、忙しいからまたの機会に誘うと言われたけど、そんなに忙しくないんだよね。M先生によろしく言っておいて欲しいな。」

「はあ。」

せっかくM先生が所長が忙しいだろうと気を利かせてくださったのに、所長、食い意地張ってるから、一緒に行きたいんだ。もう仕方がないなー。

「次は、所長がご馳走するからとM先生に伝えておきます。」

ライター紹介

竹田 紀子

http://www.asahi-support.jp/

社会保険労務士法人 あさひ合同事務所
特定社会保険労務士
大手ホテル系レストランで、人事・労務に従事。
社会保険労務士資格取得後は、社会保険労務士事務所に勤務し経験を積む。
その後、愛知労働局 総合労働相談コーナーにて労働相談員として労働相談を受け、企業側、労働者側双方からの数多くの事例に労務管理のプロとして対応してきた。
現在の事務所に入所後は、顧問先の様々な問題に対するアドバイスを精力的に行っている。

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