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社労士ノリコの事件簿

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私はノリコ、社会保険労務士として企業の人事労務問題の解決に当たっている。社会保険労務士は企業と労働者の働きやすい就業環境を作る手助けをしているのだ。

「ノリコ先生、実はパワハラ被害を訴えている社員がいるんです。」

スマホから朝一番に飛び込んできた相談だ。モーニングコーヒーで目覚めた頭をフル回転させ、情報を収集する。相談者は、製造業のクライアントの人事部長。上司にパワハラを受けて体調を崩し出社できない社員がいるとのこと。どう対処したら良いのかとの問い合わせだ。「部長さん、まあ、落ち着いてください。詳しくお話を聞かせてください。」私は、いつもの通りクールに答えた。

被害者からの訴え

被害者からの訴えは、次の通りの内容だった。

  1. 上司から「仕事ができない奴は消えてしまえ。」と言われた。
  2. 朝礼で自分を名指しして皆の前でミスを指摘された。
  3. 報告をすると大声で逆切れされた。
  4. 挨拶をしても無視された。
  5. 腹痛が激しく、吐き気ももよおし出社できない。などなど。

パワハラ事件で大切なことは、まず第1被害者、加害者双方のプライバシーを保護することだ。次に、事実関係を明らかにすること。さらに、被害者が二次被害を受けないようにすること。そして、解決策を提案すること。事件が早期に発覚した場合はこんなところか。私は、早速、午後のアポをとり、クライアントに行くことにした。

「ノリコ先生、困ったことになりました。一応、被害者と加害者に面談をして話を聞きましたが、双方で言い分が食い違っています。人事として今後どうしたらよいでしょう?」

人事部長は、困惑した表情で話を切り出した。

「事実確認のため、再度聞き取りをしましょう。それから今回の事は、社内では誰が知っていますか?」

「被害者、加害者である課長、その直属の上司である部長、同じ課の同僚4名です。部長から、同僚の4名に対して、他言しないよう念を押してもらっています。」

「そうですか。では、面談の結果をお教えください。」

人事部長の斜め45度に座り、話を聞く。これは、コーチングの手法でもあり、相手が話しやすい環境を作るためだ。フッ、私って、どこまでもヤルわね。

事実関係整理

人事部長の話をまとめると、上司の主張は、人格を否定するような発言、特に「消えてしまえ」と言う言葉について、上司は否定している。また、朝礼でミスを指摘したのは、上司として当然の指導だから何の問題もないとの認識だ。さらに逆切れなどしたことはない、挨拶はきちんとしているとのことだった。

これに対し被害者である部下の主張は真っ向から対立し、水掛け論となってしまったようだ。更に、部下は、ここ数日うつ状態になり、精神科を受診したとのことだった。

「診断書は提出されましたか?」

「はい、うつ状態で全治1ヶ月の診断書を持ってきました。」

「そうですか。では、休職扱いとなさるんですね。」

「そうするつもりです。」

「そうすると聴き取りは、急ぎますね。今日は出社していますか?」

「はい、今は就業しています。」

「では、早速、被害者の聞き取りをしましょう。呼んでいただけますか?」

「分かりました、少しお待ちください。」

被害者であるAさんからの聴き取りは、30分ほどで終わった。被害感情が強い性格らしい。話を聴く中で気になる点があった。

「上司のYさんとは、普段コミュニケーションは取れていますか?」

「入社直後から、何となく話しづらかったので必要最低限以外は話をしません。」

「そうですか。同僚で話をよくする人はいらっしゃいますか?」

「はい、C君は、年下ですがキャリアは僕より上なので、何かと相談に乗ってくれます。」

モノはついでだ、上司の聴き取りもやってしまおう。

「人事部長、上司のYさんの聴き取りもできますか?」

「はい、大丈夫だと思います。」

上司であるYさんは、仕事熱心で生真面目な人だった。

「A君は、慎重なところがあるので、仕事の手が遅いんです。丁寧にやることは大切ですが、あまりにも時間がかかりすぎる。それで、注意をしたんですが・・・。」

特に、人格を否定するようなことは言っていないとのことだった。しかし、話の端々に、執拗なほどの物事に対するこだわりを感じた。

「注意なさるときは、どんな風におっしゃるのですか?」

「色々ですよ。ただ、1つのことを注意しても他のことができていないと困りますので、細かいことまで言わなければなりません。」

今回の事件の鍵は、コミュニケーション不足と上司のパワハラに対する理解不足にあるようだ。コミュニケーション不足は、相互不信の原因となる。執拗に注意をすることは、パワハラの1つである「精神的な攻撃」に該当することがある。とりあえず、解決策として、被害者のAさんを復職後は、他の部署に異動させること、全社的にパワハラ研修を継続的に行うこと、管理職に対するコーチング研修を行うことを提案してみよう。

 

2カ月後

私のファンである税理士のM氏と一緒に、彼のマシンガントークを聞きながらランチを取っているとマナーモードになっているスマホがブルブルしだした。

「ノリコ先生、先日はありがとうございました。A君は復職してそれなりに仕事を頑張っている様です。Yさんは、パワハラに関する勉強会を仲の良い管理職と月1回やることにしたそうです。コーチングの研修は面白かったですが、なかなか身につきません。今後もご指導よろしくお願いします。」

「結局、税務署の解釈と社長さんの理解はマッチしていないんですよ。だから、税務調査で僕がキチンと説明してあげなくちゃならない。」

電話を切ると、M氏のマシンガントークが続いたが、私の頭は、既に次のクライアントとの打ち合わせのことで一杯だった。

「Mさん、ご馳走さま。次のアポが有るからこれで失礼します。」

アラッ、嫌だ、午前中に伺ったクライアントの担当者から新規のお客様をご紹介いただいたことを所長に報告していなかったわ。早速、電話しなくちゃ。

ライター紹介

竹田 紀子

http://www.asahi-support.jp/

社会保険労務士法人 あさひ合同事務所
特定社会保険労務士
大手ホテル系レストランで、人事・労務に従事。
社会保険労務士資格取得後は、社会保険労務士事務所に勤務し経験を積む。
その後、愛知労働局 総合労働相談コーナーにて労働相談員として労働相談を受け、企業側、労働者側双方からの数多くの事例に労務管理のプロとして対応してきた。
現在の事務所に入所後は、顧問先の様々な問題に対するアドバイスを精力的に行っている。

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