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海外赴任に関する考え方の基礎、給与・保険などの注意点について

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早いところでは桜の開花宣言が出ています。4月になれば新入社員も入社してきます。何となく、心が浮き浮きする今日この頃です。

こんにちは、社会保険労務士法人あさひ合同事務所の竹田です。私は、心浮き浮きしながらも花粉症と戦っています、皆様もご自愛ください。4月は、異動で転勤などの多い時期です。最近では、海外転勤も特別なことではなくなってきています。今回は、海外赴任者の労務について考えたいと思います。

 

居住者と非居住者

海外赴任や海外出張に当たっては、まず第一に考えなければならないのは、税金のことです。海外赴任などの場合に、課税関係を明確にしておかないと、海外赴任者の給料の設定など、人事労務に関する事項についても混乱することになります。

課税の原則は、「居住者」と「非居住者」によって分かれています。「居住者」は、日本国内に住所のある人、又は引き続き1年以上日本国内に居所がある人をいい、「非居住者」とは、「居住者」以外の人をいいます。「居住者」については、日本で発生した所得のみならず、海外で発生した所得も、日本国内で課税されることになります。

「非居住者」は、日本国内で発生した所得は、日本で課税され、海外で発生した所得は、所得の発生した国で課税されることになります。つまり、1年以上の予定で、海外にある子会社などで勤務するために海外赴任する場合や海外出張する場合は、「非居住者」に該当します。逆に、海外赴任であっても、1年未満の予定で海外に行く場合は、「居住者」となります。

海外赴任か海外出張かという目的で区別するのではなく、「1年以上の予定で海外へ行くのかどうか」によって、課税の原則が異なります。

 

海外赴任における給料の設定方法

通常、海外赴任をする場合は、海外の子会社や現地法人等に籍を置いて勤務することになります。本社での従業員としての地位を消滅させる、つまり退職するのか、本社に籍はそのまま残すのかは、様々だと思います。

いずれにしても、海外で勤務するにあたっては、給料は、海外の子会社などが負担することが原則です。

勿論、一部を本社が負担することはありますが、基本的な給料は、海外の会社が負担します。そうなると、「非居住者」となる従業員の給料は、どう設定したら良いのでしょう?

海外赴任する従業員の給料の設定については、次のような方法があります。

①別建て方式②購買力平価方式③併用方式の3つです。

簡単にいうと、①は、会社が同業他社の水準などを参考にして金額を決定する方式です。②は、海外の物価などを考慮して、必要な生活費などを「生計費指数」により計算し、日本に居たときと同様の生活ができるように決定する方式です。③は、日本での手取り金額をベースに、海外での負担増に対する部分を増額して決定する方式です。

大企業では、②の購買力平価方式を採用することが多いようですが、中小企業では、③の併用方式を採用することが多いようです。どちらの方式にしても、給料の設定に当たっては、「グロスアップ方式」という考え方に基づいて設定します。

「グロスアップ方式」とは、手取り額を設定し、社会保険料や税金を逆算して積み上げていく計算方法です。一般に従業員の給料を決定するのは、まず、基本給や各種手当を決定し、総額を算出する方法を取ります。

このように考えるのは、総額を決めてから手取り額を決定すると、税や社会保険料などが控除された後の金額を確定できない不便さからです。国により税率や社会保険料などが異なるために手取額を基に積算することに合理性が有ります。

例えば、1年以上の期間を予定してタイに赴任した場合、タイの現地法人から給料が支給されることになるので、タイで社会保険に加入する必要があり、また、タイで所得税が課税されます。更に、日本の本社から日本に残った家族の生活費として「留守宅手当」が日本の銀行口座への振り込みで支給されるとします。

この場合間違えやすいのは、「留守宅手当」が日本国内で支払われた給料なので、日本本社で源泉徴収をして、納税してしまうことです。

日本で支給される「留守宅手当」であっても、タイでの労働に対する給与となりますので、この額をタイでの給与に合算してタイで納税することになります。このような場合には、手取り額からの積み上げでないと、予定していた手取り額を従業委員に支給することができなくなってしまうおそれがあります。従業員と約束した手取り額を支給できないと、不満やトラブルの種になるので注意が必要です。

 

社会保険等の取扱い

海外に赴任する場合、従業員は、本社に在籍したまま、海外の現地法人にも籍を置き2重の在籍となるケースが多くあります。本社に籍があるわけですから、社会保険や雇用保険などは、そのまま継続できるのでしょうか?

原則として、本社から給料が支給されているのであれば、引き続き被保険者として加入することができます。では、給料が支給されない場合はどうなるのでしょう?基本的には、社会保険等は資格を喪失する、つまり加入できない事になります。本社の籍が無くなって、海外の現地法人に転籍した場合は、もちろん、社会保険等には加入できません。

加入が継続できた場合の社会保険料は、通常、日本で支給される給料から控除されます。先程の「留守宅手当」などの名称で支払われる給料から社会保険料等が控除されるのです。

海外での年金や健康保険の加入については、原則として、社会保険制度のある国では加入が義務付けられていますが、日本と社会保障協定を結んでいる国であれば、一定の条件のもと、加入が免除される場合があります。

アメリカやドイツなど17カ国が日本と社会保障協定を結んでいます。社会保障協定は、日本と海外での2重加入の防止を目的としたものです。一定の条件とは、赴任期間が5年以内であり、かつその社員が日本の年金に加入していることです。この場合、年金が海外で加入を免除されます。なお、一部の国との間では、海外での年金の加入期間を日本の年金加入期間と通算できることがあります。

健康保険については、海外で医療保険制度に加入する必要がある場合は、年金同様です。アメリカでは、医療保険について、日本での健康保険制度に加入していれば、2重加入をする必要がないなどです。

日本の健康保険制度に加入を継続している場合、海外で治療を受けたときは、日本の健康保険から給付を受けることができます。ただし、日本国内のように病院で一部を支払えばよいというのではなく、全額を支払って、日本の健康保険の保険者(協会けんぽなど)に事後に請求することになります。

保険給付は7割、自己負担は3割で国内と同様ですが、注意を要するのは、必ずしも海外での治療費全額の7割を保険適用とするとは限らないことです。多くは、保険適用されない治療や投薬があり、自己負担額が膨らみます。

健康保険とセットで保険料が控除されている介護保険については、40歳以上の従業員は、2号被保険者として介護保険料を給料から控除されています。海外赴任した場合、市区町村に海外赴任のため海外転出届が提出され住民票から除かれていれば、日本における住民ではないため、介護保険料を支払う必要はありません。ただし、住民登録を残したままだと、介護保険料を支払う義務が生じますので注意を要します。

雇用保険については、日本で給与が支払われている場合は、前述のとおり継続して加入できます。

しかし、給料が支払われなかったり、本社に籍が無くなった場合は、被保険者資格を喪失しますので、雇用保険の基本手当(俗に言う失業手当)などを受給することは原則できません。ただし、海外現地法人などを退職した場合、海外赴任のため本社をを退職し被保険者資格を喪失し海外に赴任した日から3年以内であれば、海外赴任のための本社を退職した日以前の期間を基本手当の算定対象期間とし、基本手当を受給できる特例措置があります。 

労災保険については、労災保険の適用範囲は、日本国内に限定されますので、海外赴任した場合、原則として労災事故に遭っても、労災保険は適用されません。ただし、海外赴任者のための労災保険の特別加入の制度を利用して「第3種特別加入者」として、海外での労災事故に備えることが可能です。海外赴任者には、特別加入をお勧めします。

 

海外赴任者の健康管理と退職防止

海外赴任者は、慣れない生活環境に身を置き、言葉や生活習慣の違いによって大変なストレスを抱えています。単身赴任の場合は、家族とのつながりが希薄になるため、より大きなストレスを感じるものです。そこで、海外赴任者に対する健康管理として、一時帰国制度や現地での医療機関の確保、家族帯同者を伴う赴任など会社は、海外赴任に当たって、従業員の健康を維持するための対策を講ずる必要があります。

まず、現地で医療設備が整い、日本語や少なくとも英語で意思の疎通ができる病院を見つけ、従業員が受診しやすいようにすることです。海外の医療水準は、国によって大きく異なり、言葉の違いは、大きな不安となるからです。更に、奥さんを帯同した場合、現地で出産となると、安心できる医療機関が絶対に必要になります。

また、メンタルヘルスの観点からも、一時帰国制度を年に何回か設けることで、気分転換や家族とのだんらんの時間を持つことにより、悪化を防止することが可能となります。家族を伴っての赴任であれば、メンタルヘルス上、なお好ましいことは言うまでもありません。ただし、この場合には、家族への配慮が重要となります。

配偶者の言葉の問題や子供の教育の問題等、十分な対策を講ずることが必要です。これらの対策を講じるとともに、現地のワーカーとの人間関係に対しても配慮する必要があります。

現地ワーカーと十分なコミュニケーションを取り、会社から求められる成果を挙げることが赴任者の任務となります。現地ワーカーと溝ができたり軋轢が生じたりすると、せっかくの能力も発揮できなくなります。現地の人達とのコミュニケーションの方法や習慣や風俗を赴任前に十分教育しておく必要があります。お互いを尊敬し、尊重し合える人間関係が大切になります。

給与面のみならず、社会保険等の待遇やこれらの配慮が欠けた場合、従業員は、早期に退職してしまうリスクがあります。会社にとって大切な人材を失うことは大きな損失です。

海外に事業を展開することが一般的になったからこそ、海外赴任が特別なことではなく、普通のこととして会社がキチンと取り組むことが大切ではないでしょうか。

ライター紹介

竹田 紀子

http://www.asahi-support.jp/

社会保険労務士法人 あさひ合同事務所
特定社会保険労務士
大手ホテル系レストランで、人事・労務に従事。
社会保険労務士資格取得後は、社会保険労務士事務所に勤務し経験を積む。
その後、愛知労働局 総合労働相談コーナーにて労働相談員として労働相談を受け、企業側、労働者側双方からの数多くの事例に労務管理のプロとして対応してきた。
現在の事務所に入所後は、顧問先の様々な問題に対するアドバイスを精力的に行っている。

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