新入社員研修を考える際には、学生から社会人へと意識を切り替え、早く会社に慣れ、仕事へのモチベーションを高められるよう、プログラム企画において見落としがちな以下の3点についても再確認しておきましょう。
能力開発としてのフォローアップ研修も検討する
入社直後の新入社員研修は、欠かせないものではありますが、この時期は環境が大きく変わって緊張しているうえに、学ぶことが多いため、実際には「あまり身についていない」ことも少なくありません。
そのため、一定期間現場で実践を経験した後、研修で学んだスキルや知識を復習し、確認するフォローアップ研修までを新入社員の能力開発プログラムとして用意しておけば、学んだ内容のさらなる定着が期待できます。
フォローアップ研修の内容は主に、
- 現在の自分の状況の振り返りと課題の洗い出し
- ビジネスマナーやビジネススキルの復習や理解促進
- 同期間での課題の共有を通じた業務の理解促進や、不安や悩みの解消
- 企業理念や仕事の意味、価値の再確認
など、新たに何かをインプットするというよりは、内省を通じて理解を深める内容が中心となるのが一般的です。
配属先での実務を経て、現場の難しさや厳しさ、課題を感じた上で新入社員同士が集まり、顔を合わせて互いの状況や課題を共有することは、自分の理解を深めるだけでなく、お互いに刺激になり、モチベーションという点でも大きな効果があります。
社内で人事担当者がファシリテーターとなって行うこともできますし、外部の研修会社にも様々なプログラムがありますので、導入を検討する際にはリサーチをしてみるとよいでしょう。
教育係が新入社員研修に前向きになれるようサポートする
社内外の講師が行う集合研修とは異なり、OJT研修は1人1人の新入社員に教育係がついて行われます。そのため、教育係がどのように新入社員に関わり、どのようなコミュニケーションを行うかが、新入社員の成長に大きく影響します。
知識を押し付けるだけになってしまっている、教育係自身が忙しくて教えることに手をかけられない、新入社員が質問をしにくいなどの状況ですと、業務理解は進まず、新入社員の能力開発は期待できないものになってしまいますので、選出には十分な配慮が必要です。
また、効果的な指導のためには、新入社員の意見を聞き出して理解度を確認し、時には実践してやって見せたり、繰り返し根気よく同じことを教えたりする必要がありますが、新入社員に丁寧に向き合えば向き合うほど、「教育係」の負担も大きくなります。
負担は大きいですが、自分自身の知識を再確認でき、リーダーシップやコミュニケーション力、マネジメントなどを学んで成長するとてもよい機会にもなりますので、そのように前向きに捉えられるよう教育係となった若手社員へのフォローも忘れないようにしたいものです。
そのため教育係には、リーダー候補としての期待や、必要なコミュニケーションの在り方を伝える、新入社員教育を業務の1つとみなして評価対象にするなど、前向きに新入社員教育に取り組めるような環境を整えましょう。
「厳しい」新入社員研修は、要注意?
また、新入社員研修では、「これくらいしないと、学生時代の甘い考えが矯正できない」「社会人として、困難に負けずにしっかりやっていくためには必要」という考えから、「厳しい」研修を行っている企業も少なくありません。
宿泊を伴う集合研修で、企業理念を大声で読み上げたり、長い距離を歩いたり。あるいは研修で講師から厳しく詰められ、理不尽に罵倒されることを体験する、OJTで飛び込み営業や路上で多くの人との名刺交換することを課し、度胸をつけさせるというプログラムを実施している企業もあります。
こうした厳しい新入社員研修は、功罪があります。メリットは、社会人の厳しさを理解し、社会人としての自覚を持たせることができますし、厳しい研修を乗り越えたという自信、達成感で新入社員が短期間に成長することも期待できます。
さらに、実際に業務が始まれば理不尽なことも起きますから、研修期間のうちに、学生時代には体験しなかったような理不尽な経験をしておき、ストレス耐性や連帯責任の感覚を身につけるなども成果として考えられるでしょう。
ですが、あまり新入社員を追い詰めるようなプログラムになると、早期離職を招き、SNSやインターネットの掲示板などに「ブラック企業」として口コミが流れてしまいます。「ブラック企業」という言葉に対する反応が大きい現代では、それが今後の採用活動に影響を及ぼす可能性があります。
ですので、毎年恒例の研修内容であっても、
- その研修によって、退職者が増えていないか?
- 応募者が少なくなってきたなど、その後の採用活動に影響が出ていないか?
- 人材育成に本当にプラスになっているか?
という点について、改めて確認してみましょう。