前編:「本当に必要な人はどんな人?」から考え直してみる
こんにちは。採用から定着まで企業の成長を支援する株式会社アールナインの小松です。
梅雨も明けていよいよ、夏も本番ですね。今年は猛暑だと言われていますが、その夏の暑さ以上に熱いともいえるのが、今の技術系職種の求人市場です。
パーソナルキャリア株式会社が運営する転職情報サイトDODAが発表した、最新の職種別求人倍率(2017.7.10発表)によると、IT・通信分野の技術系求人倍率は実に7.04倍。電機・機械分野では4.21倍と、前月からわずかに下がってはいるものの、全職種のなかでも極めて高い倍率で推移しています。
これだけ求人倍率が高いと、「なかなか応募者がこない」というなかで採用すべき人材をどう見極めればいいのか?という難しい問題が発生してくるのではないでしょうか。
そこで今回から前後編で、過熱する現在の技術系採用市場で、採用すべき人材を見極める採用のポイントについてまとめてみたいと思います。
技術系採用の見極めは「本当に必要な人材は?」の要件定義から
技術系職種の採用の難しさは、その応募者のもつ「技術力(スキル)」と「対人コミュニケーション力」が必ずしも比例しているわけではなく、面接だけではなかなか「技術力(スキル)」が図りにくいという点にあります。
たとえば、必要とする経験があり、持っている技術力が高くても、それをわかりやすく説明する力が足りない人もいます。職務経歴書で表現する力、面接で相手に伝える力が低く、スキルの高さが伝わらない…ということもありえます。また、それなりに自分のスキルを的確に伝えることができても、基本的なコミュニケーション力や対人能力に問題があるゆえに、面接での印象が悪くなってしまうという人もいます。
反対にコミュニケーション能力が高くても、経験や技術力が希望するレベルに満たないということもあります。
従業員一人一人が社内の雰囲気に与える影響が大きくなる中小企業だからこそ、「経験や技術力だけでなく、人柄も、コミュニケーション能力もそれなりに…」と思うのは当然ではあるのですが、高い技術系職種の求人倍率を考えると、それではいつまでも人材が採用できない状況に陥ってしまいます。
帝国データバンクが7月10日に公表したデータによると、人手不足倒産件数は4年前の2.9倍に増加しており、人材が採用できないことが企業の死活問題にも関わりかねなくなってきました。
だからこそ、限られた応募者から採用すべき人材を見極めるために、「本当に必要なのは、どんな人材なのか?」という人材要件からもう一度見直してみましょう。
欲しいのは「経験・技術力」か「コミュニケーション力・対人能力」か?
この技術系職種の人材要件の見直しでは、
- つまるところ本当に欲しいのは「経験・技術力」なのか、「コミュニケーション力・対人の宇慮kう」なのか?
- それはどこまでのレベルがあればよしとするのか?
- その優先順位が高いほうの条件を備えていれば、もう一方の条件が足りなくてもよしとできるか?
をはっきりさせるのが重要なポイントです。
例えば、現場が忙しく、入社後に丁寧に教えている余裕がなければ、必要なのは多少コミュニケーション力や対人能力が低くても「経験・技術力(スキル)」がある人ということになるかもしれません。また、その職務を冷静に分析すれば、「実はそれほど、職務遂行にコミュニケーション力を必要としない」ということもあるのではないでしょうか。
もしそのような判断をしたならば、面接で多少コミュニケーション能力や対人能力の至らなさがあったとしても(そして、対人能力が低いがゆえに面接での印象があまりよくなかったとしても)、そこに目を瞑る決断も必要です。
あるいは現場に多少余裕があり、研修制度もあって、経験が浅い人材でも教えられる余裕があるならば、「わからないことを人に聞ける」「挨拶がきちんとできる」等のある程度のコミュニケーション能力や対人能力があり、募集職種への興味があれば、今度は経験や技術力(スキル)不足への妥協も念頭に置く必要があります。
繰り返しになりますが、技術系職種では業務で必要とする経験や技術力と、面接で好印象を与えるコミュニケーション力を兼ね備えて持っている人はそう多くありません。
だからこそ、本当に必要なのはどちらなのか、そしてそれは必要最低限としてはどのレベルが必要なのか、「必須要件」と「尚可条件」を見極め、採用プロセスに関わる現場の上長や経営者の間でコンセンサスを得ておきましょう。
「採用してはいけない人を採用しない」という視点を忘れずに
そして採用の見極めにおいて重要なのがもう1つ、「採用してはいけない人を決めておく」という視点です。
弊社の採用コンサルティングの場面でも、中途採用がうまくいっていない企業は、応募者がいないからといって、「採用してはいけない人」を採用してしまっていることが少なくありません。
採用してはいけない人を採用してしまうと、余計なコストと手間がかかってしまうだけでなく、採用すべき人を採用するチャンスを逃してしまうことにもなります。今まで「すぐに辞めてしまった人」はどんな人だったか?を振り返りながら、「こういう人だけは採用してはいけない」という人を決めておきましょう。
たとえば、
- 最低限の挨拶ができない人。
- 転職回数があまりにも多い人。
- 職務経歴にあまりにも一貫性がなさすぎる人。
- 面接の日程調整で、返信や折り返しの電話が遅く、連絡がなかなか取れない人。
など、それぞれの企業で「こういう行動をしていた人は、結局すぐに辞めてしまった」という経験則をお持ちではないかと思います。
採用要件の「必須条件」と「尚可条件」を洗い出すことが難しい場合には、この「採用してはいけない人」の線引きだけでもしっかりしておくと、採用の見極めがかなり変わってくるでしょう。
次回後編では、面接で実際に人材を見極めるための質問やコミュニケーションのポイントについて、ご紹介していきたいと思います。