第3回 学生が思わずロイヤルティを感じてしまう対応とは?
こんにちは。採用と人材育成のコンサルティングを行う株式会社アールナインの小松です。
日本語では「忠誠心」や「愛着心」と訳される、このロイヤルティ。まだ入社前で仕事をしているわけではない内定者の学生にとっては、「直接会う会社の人(人事、リクルーター、面接官)=企業そのもの」です。だから、企業へのロイヤルティも、この「人の印象」に大きく左右されます。
- 「この人みたいになりたい」
- 「この人と会って人生が変わった」
- 「こんなすごい人が働いているんだから、きっとすごい会社なんだろう」
学生が人事やリクルーターに対してそう思えた時、その「すごい人」が働く企業=「すごい企業」として学生の心は大きく動きます。
この連載では、内定者の学生のロイヤルティを高めるためのポイントとして、①企業や社員について学生よく知ってもらう、②そこに学生が共感できる点や惹かれる点が多くある、③社員の対応が誠実で気持ちよい、の3つを紹介してきました。最終回の今回は、学生とのつながりがグッと深まるような、ロイヤルティが高まる社員の対応を考えてみたいと思います。
就職先の意思決定に大きく影響した「人事」の存在
就職活動中や内定者の学生が接するのは人事だけではないですが、やはり最も接する機会の多い人事の影響は絶大です。「就職先決定のキーパーソン」について調査した、「2015年度日経就職ナビ学生モニター調査結果」(2014ディスコ)でも、キーパーソンは「人事・採用担当者」という回答が42.2%と第1位となっています。
同調査では、一般社員(リクルーター、人事以外の社員)が22.5%で第5位、リクルーターが16.8%で第7位なので、その差は歴然です。参考までに、第2位は父親で37.1%、第3位は母親で34.8%。その後に友人・知人が33.7%で第4位に続きます。この結果からも、人事の影響力は家族や身近な友人の影響を超える、いかに大きいものであるかがわかります。
この調査は「就職先の意思決定」に関するものでありますが、この結果からも企業の印象を大きく左右する「人」は、人事であることは間違いないといえるでしょう。
カリスマ人事に学ぶ内定者との繋がりを深める対応のコツ
では内定者とのつながりがグッと深まるような人事の対応とは、どんな対応なのでしょうか。就職活動情報サイトをいくつか見てみると、「この人にあって人生が変わった」「一度はこの人に会うべき」と、学生の間でカリスマのようになっている人事が存在しています。
以前私が在籍していた大手人材紹介会社でも、学生が思わず魅力を感じ、「この人みたいになりたい」と思うような現場のトップ営業を採用担当に配属し、採用を成功させていました。このようなカリスマ人事の対応には、いくつかの共通点があります。彼らの対応から、内定者の心を惹きつけ、つながりをグッと深めるポイントを学んでみましょう。
①相手を深く知ろうとしている
人間には多かれ少なかれ承認欲求があるため、自分のことを真剣に知ろうとし、理解しようとしてくれる人に対しては心が動きます。
学生の心を掴む人事は、この「知ろうとする」姿勢の本気度がかなり高いです。学生が目指す目標や、こうありたいと描いていること、入社してどんなことがやりたいかなど、どうしてそう思うのか。本質的な質問を投げかけ、時には学生と一緒になって考え、答えを探すサポートをしながら、学生のことを知ろうとします。
この時に、単に「自分の話を真剣に聴いてくれた」というだけでなく、質問によってより深く自分を知り、一緒に考えてもらったことで、学生自身に気づきが得られるからこそ、それをもたらしてくれた人事に対して心がグッと動くのです。他にも趣味や興味のあることなど幅広く質問し、相手を知る努力をしています。
選考期間が終わると、どうしても「企業のことを理解してもらう」ことに注力しがちですが、ぜひカリスマ人事にならい、内定者を知り、理解しようとする姿勢も続けていきましょう。
➁内定者にとって「ちょっとした不安や悩みを相談できる人」
カリスマ人事はカジュアルなコミュニケーションも得意です。「最近どう?」という何気ないコミュニケーションから、学生の状況をうまく聞き出していいきます。このように、内定後もぜひ何気ないコミュニケーションも大切にして、内定者が何かあったときに相談しやすい状況をつくっておきましょう。
選考期間中であれば、進捗などコンタクトをとる機会も多いですが、内定後はコンタクトをとる機会が減り、それが内定者の不安につながる可能性も少なくありません。そんなときに、業務連絡だけでなく趣味やプライベートに関するちょっとした雑談も交わすコミュニケーションが続いていれば、内定者も「ちょっとした不安や悩み」が言い出しやすくなります。
こうした定期的なコミュニケーションがあれば、ちょっとした内定者の変化にも気づけます。何かあったらすぐに、「いつもと違うけど、どうしたの?」と声をかけて、その不安材料を取り除く対応ができます。不安や悩みに向き合うことは重要ですが、その前に「内定者が何かあったときに相談でき、内定者に何かあったときに気づける」関係づくりを目指していきましょう。
③自分の経験や価値観、失敗談も時々披露する
カリスマ人事と言われる人は、自分の経験や仕事に対する価値観、失敗談などを熱く学生に語っています。その思いや考え方、生き方に触れて感銘を受けた学生が、
- 「この人すごい」
- 「この人に出会って変わった」
とその人や、その人が働く企業のファンになっていきます。こうした状況を目指すには、学生に人事が自分の経験や考え方、生き方を知ってもらう必要があります。
あまり自分のことを語る機会は少ないかもしれませんが、あえてぜひ、自分の経験や価値観、失敗経験から何を学んできたのかなどを折に触れて、内定者に語ってみてください。人事の人となりがわかり、親近感を感じられれば、それがロイヤルティ(愛着心)にも繋がっていきます。
こうしたテーマを話題にするタイミングは、なかなか難しいものですが、内定者から不安や悩みを相談されたとき、内定者と飲みに行った時などを活用していきましょう。
「こんなに○○な人がいるんだ」を目指して
自分が消費者として、ある商品やサービスに対してロイヤルティを感じる状況をイメージしてみてください。
そんなときは、「この商品には、他にはないこんなすごいところがある」という「他にはないと思える驚きと感動」が、ロイヤルティを高める要因になっているのではないでしょうか。
この思いは、内定者と人事の関係にも当てはまります。
- 「こんなに仕事について熱く語る人がいる」
- 「こんなに自分の話を聴いてくれる人がいる」
- 「こんなにイキイキと働いている人がいる」
と他にはないと思えるような対応で、内定者とのつながりが深まり、ロイヤルティも高まるような関係を目指していきましょう。